レワニワ閲覧室に新蔵書

 久しぶりに新しい蔵書です。『シェイクスピアはドン・キホーテをどう読んだか?』2021年1月刊の「三田文学」に掲載されたエッセイに付録を付けるなど改変を施したものです。以下、梗概を貼り付けておきます。

 戯曲『二重の欺瞞』(1723年初演)は、文体統計解析などによる研究が進展して、権威あるアーデン万全集に収録されたことなどから、シェイクスピアが共作者である『カルデニオの物語』(1613年初演)を元にした改作であるとする一定の評価が得られた。結果、「シェイクスピアはドン・キホーテをどう読んだか?」を探るヒントが生まれたのだが、こうした問いはアカデミックな世界では取り上げられていない。このエッセイは、その問いに答えようとする。

 1では、偽作との声の高かった『二重の欺瞞』の評価が逆転する経緯を概説し、2では、シェイクスピアが、『ハムレット』の主人公と『ドン・キホーテ』の脇役カルデニオとの本質的な類似を理解したことから、セルバンテスの大長編の一部を戯曲化した可能性を示した。その主な論拠は、『二重の欺瞞』に『ハムレット』の筆致が透かし見えることと、『ドン・キホーテ』の怪物カルデニオが『二重の欺瞞』の凡庸なフリオが変わる際の、以前には指摘されたことのない重要な変更である。

 付録として、主人公として物足りないカルデニオをハムレット化して魅力的にする(?)プランを提示する。

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