横書き詩集1には目次もページ数もありません。以下、冒頭から早い順に記します。
冒頭の一行、錯乱した紙コップの空から、タイル張りの空が見える。門柱に貼られた「猛犬注意」の札みたいなものです。実際には中にいるのはチワワなのですが(チワワは小さくても気が強く獰猛らしい)。この一行で呆れてしまう人は、先に進まない方が幸せだと思います。呆れつつも、あるいは気にかけずに読み続けられる人は、寛容な心の持ち主でしょうから歓迎します。まあ、本はいつでも好きな時に閉じられますし。
おれは一人称だ。で始まるのは、1人称から2人称、3人称と進んで行く、形式を先に考えて中身を当てはめる類の詩です(この前に掲載したチョウザメの詩も形式先行です)。しかし、元の原稿の画像でお判りのように、1人称の「わたし」と「ぼく」の2行が欠けています。この2行分は書き直しても気に入らなかったようです。2行欠けたまま掲載します。
銀色町(シルバータウン)の法則 この詩を書いた当時、「シルバー」という語に老齢の含意はなかったはずです(Wikipediaによれば国鉄が「シルバーシート」を導入し始めたのが1973年、書いたのはそれより少し前だったでしょう)。「銀色町」は外から銀色に見える町というだけの意味でした。
五里霧中TV 題名と中身がつながっていません。なぜ、こんな題名なのか、正直全然わかりません。できるだけ元の原稿のまま公開する方針なので、別のタイトルをつけたりしないことにします。こんな短い文章なのに、岡島君という人物の感じ悪いこと。好かれる登場人物を作れないのは、昔から……この断片だけ、もっと時期の新しいメモという可能性が少しあるのですが、古い断片の中に紛れこんでいたのは事実なので掲載します。
キャロル氏に関するメモの(1)と(2)は画像のみを掲載しました。事実上読めないと思います。キャロル氏に関するメモ(3)の愛着のある部分を生かしたくて、でも(3)だけ掲載すると奇をてらっているみたいなので、こんな風にしました。
このままだと沈んでいきます以下、手描きのよく分からない絵と文字の羅列が5枚続きます。グラビアページ? この部分はいわば「詩画集」だと思いますが、意味不明の文字の羅列は詩とも違うので……。「印刷」したら、昔懐かしい「前衛」の雰囲気が漂っていたのに驚きました。時代の見えない拘束に不意に気づかされた感じです。ただし、元の原稿はトレーシングペーパーに描かれていて、かなり雰囲気が違います。レワニワ閲覧室に所収の『落書帳』にも掲載しました。そちらの方が少し画質が良いです。
身の丈が……と1行目にある絵と文は、初めて書いた小説に当初結末がなかったので、付け足すためのメモ、原稿だったと思います。その「処女作」は断片の集積のようなものでした。そのようにしか書けませんでした。どこが結末なの? といぶかる人がいそうですが……。逮捕、裁判といった材料は、次の好きだ、好きだと始まる詩と共に、ルイス・キャロルにカフカの影響も重なって出て来たものです。長い間、罪を犯して苦しむ夢をよく見たこととも関係がありそうです。ここら辺りについて思うことは多いのですが、書けば本筋から離れるのは必定なので、注釈を終わりにします。