思いもかけない作品ができてしまい、釈明をしたくなりました。誰に釈明しようとしているのかは不明ですが。

「女神が自分の創った世界の『校正』作業のために肩こりに悩まされる」というのが元のアイデアでした。

女神とその夫は、ギリシア神話のヘラとゼウスの「夫婦」をイメージしていました。このアイデア自体は、去年(2019年)の初夏から秋にかけてのある時、突然頭の中に降って来たのですが、ギリシア神話に子供時代から馴染んでいて、さらに近年ヘロドトスやホメロスを読んだことが源泉になったと思われます。

その時はごく簡単にメモをしただけで、実際に形にすべく取りかかったのは、今年(2020年)2月下旬のことでした。ところが、あに図らんや、書き出したら、ギリシア神話は吹っ飛んで、圧倒的に聖書の世界になってしまったのでした。ヘレニズムからヘブライズムへ!? しかも短いコメディーの絵本にするつもりだったのに、気づくと短編小説の分量を書いていました。

旧約聖書を読み続け、かつそれについて書こうと苦心惨憺した影響は確実にあるでしょう。はたまた、歴史の示すとおり、ギリシア神話より聖書の方が強いのだと考えてみるのも一興ではあります。新訳からの「引用」は読んでもらえば分かると思いますが、旧訳の方はわかりにくいかもしれません。自作解説みたいなことは野暮で嫌いだったはずなのに、今回はなぜかやる気満々。レワニワ書房通信のネタにする予定です。

作中、占いの場面は、アメリカのTV番組 “Maury Show”の”Jesus Mary and Joseph”のエピソードを参照しています。この動画はYouTubeで見ることができます。検索してみてください。

『鳥の女王』に引き続き、アメリカ在住の日本人陶芸家 Shoko Teruyama(照山祥子)の作品を作中に用いました。作品は全て独立したもので、許可を得て私が独自の判断で配置しました。当然ながら、内容に合わせて制作された挿絵ではありません。

この作品は一定水準の校正を受けています。ただし、万全というわけではないので、間違いを見つけた際、お知らせいただければありがたい次第です。

2020年3月12日 伊井直行