校正者の日10周年、近づく
レワニワ図書館恒例の「校正者の日」が近づいて来た。今年で創設10周年を迎え、誰が記念すべき年の表彰者に選ばれるのか、ネットにとどまらず大手メディアでも話題になっている。「校正者の日」はまずネット図書館蔵書の質的向上に貢献したが、今では世間の誰もが知る恒例行事となった。
レワニワ図書館は、当初から校正者こそ文字文化の要であるとして強力にバックアップして来た。一時期、表彰者の選考過程が公開されないことをはじめ、選定基準が曖昧、身びいきや不正があるといった批判や指摘がされたこともあった。しかし、図書館側の毅然とした姿勢が評価され、そうした声は聞かれなくなっている。
校正は裏方の仕事であり、大切さの割に報われない時代が長かった、そんな地味な役割の校正者が正当な評価を受けるきっかけを作ったのが、レワニワ図書館制定の「校正者の日」だったのである。現在では、校正者の重要性は、紙、ネット、電波など媒体を問わず広く認識されている。一見校正と縁が薄そうな商社、金融などの一般企業でも、優れた校正者との連携をアピールして会社の信用度を高め、企業価値を上げることが常識化して来た。
10周年ということで、過去の校正者の日の思い出話が各所で取り上げられている。第1回校正者の日の式典で、受賞者が授賞式直前に雲隠れしたことは今も語り草だ。図書館側では校正者の日の前途を危ぶんだが、これが話題となり、かえって校正者の重要性が世間に知られるきっかけとなった。
その後姿を隠した受賞者から、あくまで黒子に徹したいとの意向が伝えられ、賞自体は授与されたものの、その氏名は今に至るまで明かされていない。また、第1回受賞者の提言を受け、派手な授賞式が苦手な場合、式典とは別にこじんまりした別室での受賞も可能とされている。希望者は昨年までに2名いたとのこと。
第3回以降、正賞は「受賞者の理想の校正台」となっている。これは第2回受賞者が副賞の賞金について、ありがたいけれど、一番欲しいのは長年使っている校正台の新品。今のはガタが来始めているが、亡くなった祖父の手作りなので、お金を出しても同じものは手に入らないと語ったことによる。ご存じのように、校正台は今ので満足、あるいは使わないという向きには「受賞者の理想の眼鏡」が贈られる。
校正者の日には、誰が表彰されるかはもちろん、校正という仕事の中で何がクローズアップされるかにも注目が集まる。当然「校正落ち」のない正確さは必須の条件だが、校正はただ誤りがなければいいというものではないのである。
作者の意図と正しい言葉のあり方、校正における日本語と理想の日本語、校正者の読者に対する義務、発注者とのあるべき関係、編集者との共同作業と役割分担、校正者にとっての辞書、ネット情報の扱い方、ネットブックと紙の本の違いなど、校正という仕事の持つ様々な側面が、表彰理由や受賞者のコメントにより照明を当てられて来た。今年、主催者と受賞者の双方からどのような発言がなされるのか、期待せずにいられない。