米マックロ社、ネット図書館事業から撤退か

 米マックロソフツ社が、不振のネット図書館事業から撤退するとの観測が強まっている。マックロ社のネット図書館「マックロ・ライブラリー」用のブックプロセッサー「ブックリ(ブック・クリエーター)」は、セキュリティー対応以外の更新が半年以上行われていない。また同ライブラリーへの新規申し込みボタンは2週間前にホーム画面から消え、別のわかりにくい場所に移された。

 ネット図書館は、日本発の「レワニワ図書館」が先行者利益を享受し、複数のIT調査会社のレポートによると世界市場全体の7割から8割をおさえている。その他ではグルグル・ブックマスターが15%程度、各国のローカルなネット図書館が残りをわけあっている。マックロ社のシェアは最大でも5%に満たず、直近では1%ほどに落ち込んでいたとみられる。かつてF&B社やアマゾネス社もネット図書館への参入を表明あるいは検討したとされるが、いずれも事業化を断念している。

 マックロ社は、「ブックリ」が自社ワープロソフト並みに多機能であることや、HTMLベースによる検索などの利便性をうたって参入したものの、ユーザーの支持は得られなかった。マックロ社をはじめHTMLベースで参入した大手事業者はことごとく敗退、撤退しており、こうした他社の参入戦略の誤りも、レワニワ図書館の先行者利益を拡大させる一因になったとされる。

 マックロ社の広報担当者に、「ネット図書館事業からの撤退が噂されているが」と問い合わせたところ、「現時点でお話できることは何もない」との答えが返って来た。ただし、事業撤退自体を否定することはなかった。レワニワ図書館は、「他事業者の動向についてはコメントいたしません」とのことだった。

 IT評論家野口浩生氏談「マックロ社が事業を撤退したとしても驚きはなく、むしろ遅きに失した感がある。ネット図書館が他のプラットフォームと根本的に異なっていることを、マックロ社をはじめ殆どの事業者は理解していなかった。レワニワ図書館がブクプロをHTMLベースにしなかったのは小手先の技術の問題でなく、ネット図書館のコンセプトにかかわっていた。検索などの機能より本としての完成度を優先したのだ。グルグルは比較的早期に察知して追随したが、今も歯が立たないでいる」

 文芸評論家須賀藤江氏談「レワニワ図書館は当初からその存在理由を明らかにしていた。『ネット図書館は落ち着きのないネットの時を停める』『動き回る獣だらけのネットの荒地に草木を植え、林や森をつくる』やや詩的な表現なのでIT事業者や投資家には理解が難しかったようだが、一般の人は反応した。レワニワ図書館は、変化して止まることのないネット世界に、立ち止まって一息つける場所を作ることで成功したのだ。事業者たちは詩的な共感力を欠いていたために、レワニワ図書館の真の意義を見つけ損なったとも言える」

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